top of page

処世界さんの日記(三年目)




いつも当山のブログをお読みくださりありがとうございます


「処世界さんの日記」というタイトルでブログを書きはじめて半年以上が経ちまが、これはNHKの放送などで今年になって興味を持たれた人や、今まででお松明しか知らなかったという人にも分かるよう「修二会を追体験しながら知ってもらおう!」というコンセプトで始めたものです。


 さて、12月15日に更新した処世界日記(参拾)ではついに「3月」の日記に突入しました!ここまでが、長かった…そしてこれからはもっとなげぇんです。週一更新では絶対に終わらない…(汗)


 さて、今この文章を書きはじめたのは12月16日。日記の読者であればお分かりですね。え?分からない?読み直してください。


「処世界さんの日記(一)」


 東大寺では12月16日を「良弁忌」としており、良弁上人像の祀られている開山堂の御開扉を行っております。当山では毎年、この日に信徒の方々と参拝に訪れ、執金剛神像や諸堂を拝み、護摩を焚くなど精力的に動いています。


 そして、二年前からは私にとってより大切な一日となりました。それはもちろん修二会の練行衆のメンバーが発表。呼ばれるだろうか?呼ばれないだろうか?ドキドキするものです。


 令和二年・令和三年と処世界を勤め上げた私は、次へ向けての準備を始めておりました。修二会は籠もることができるのかどうか分からずとも、備えだけはしなければなりません。特に今回は「三年目」。修二会では三年目になると新しい仕事が増えるのです。


 それが「神名帳」。東大寺で行われている修二会は奈良時代から続く法要です。ゆえに、その法要の構成は奈良時代のそれに沿っております。その中でも特徴的なのが土着の神々の勧請でしょう。今でも密教修法の表白などでその土地の神様について言及する部分がありますが、あくまでその程度。奈良から続く寺院のそれとは比べ物になりません。


 500柱ほどの神様のお名前を読み上げて、勧請する。それが3年目以降の練行衆に課される仕事です。まずは読み上げのリストも手書きで写す必要があります。このリストが神名帳。これが中々に時間をとる作業。


 そして、その読み上げには節が着きます。これは師僧から伝授いただく必要があります。わざわざ奈良まで赴いて稽古を付けていただきます。このように、修二会に籠もることが決まる前から修二会に向けて様々な準備が行われる。これ故に、修二会は参籠回数ではなく、参籠した順番で上郎下郎が決まると言われる方もおられます。


 さらに、役職によっても仕事が異なります。例えば「権処世界」(下から二番目)以上の平衆は「読経」と呼ばれるこれも節の付いた不思議なお経を読む。そうなると更にお稽古が必要と、遠方の末寺にとってはハードルが高い。「中灯」(下から三番目)以上では「懴法(せんぽう)」も加わる。人によっては処世界からいきなり「中灯」になり、「六時」「読経」「懴法」が一度に襲いかかってきたという方も…。


 少なくとも私が今回の発表で「中灯」になることは有りません。私の下に入ることのできる僧侶がいないですし、そもそも、そのような緊急事態は滅多に起こりません。それゆえ、「権処世界」になるのではと「読経」で用いる経本の写経なども精を出しておりました。


 発表は16日の寺役ですから、少なくともその前日には奈良入りしている必要があります。しかし、せっかく本山に来るのだからと、14日に行われる「仏名会」別名千遍礼拝の法要にも参列することとしたのです。先輩方は「なぜ好き好んでこんな辛い法要に参加するのか?」と不審に思われていますが、ただの修行好きです。


 プロフィールにもよく書いているのですが、私は心身の修行をとても重要と考えています。座禅も、写経も、読経も、滝行も、山岳修行も。すべて心だけではなく体を使った修行です。本を読み、考えるだけでは不十分。身体で体験してこそ仏の教えを感じることができるのだし、身体で感じなければ悟りへ近づくことは出来ないと考えます。この辺りはよくお寺の法話でも詳しくお話しています。


 さて、16日。この日は両親と共に新大宮のホテルに宿泊。車で二月堂へと向かいます。今回の寺役の集合場所は三月堂の裏。二年前までは開山堂の一室でしたが、昨年からは密な状況を避けるためにこちらが用いられます。


〈参考〉


 この部屋は電球がなく、灯明の灯りのみ。今年は天気が良かったのですが、雨などで天気の悪い時は非常に薄暗い。私は座布団に座り、その時を待ちます。それぞれが籠もるのか娑婆にのこるのか。籠もるとして誰がどの役職なのか。様々な思いを持って臨む。そのため場には全体的に緊張した空気が流れます。


 八時半ごろになると、管長猊下が配役を読み上げ始める。読み上げられるのはそれぞれの所属寺院。


「和上 正観院

大導師 持寶院…


 和上から粛々と読み上げられ、呼ばれた僧侶はその場で頭を軽く下げて一礼。


北座 衆之一 金龍寺

南座 衆之一 寶珠院 …


 そして、


権処世界 寶厳院

処世界 普賢光明寺


 静かに頭を下げる。


 ふぅ。ということで、三年目も処世界さんです!


 この「処世界」という役職は前述の「読経」も無く、修二会という行事において様々な場面でお役目が与えられます。いわば修二会の基礎を学ぶにはうってつけ。そんな処世界に三回もなれるなんて幸運です。もちろん、体力的に厳しい役職であることは言うまでもありません。石の上にも三年、ではありませんが誠心誠意、お役目を勤め上げてみせましょう!


 この日記も参籠までには完結させ、「三年目」の経験も加味してブラッシュアップしたものを皆さんにお伝えできればと意気込んでおります。乞うご期待!


0件のコメント

最新記事

すべて表示
bottom of page