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「奈良の心を聴く」(自分の言葉に縛られる男子大学生)



 聴き込み寺を開催する時、多くの場合は女性の比率が高いのです。ただし、路上だと6:4くらいですね。


 しかし、今回のようにホテルでのクローズドで設定された場となると来られる方は少なくなってしまいます。もちろん、開催する時間や日程によってお勤めされている方は来にくいことは確かです。


 しかし、女性の方でも勤務されていて来られるという方ももちろんいらっしゃいます。


 これは面白い結果で、男女の価値観や、「何を恐れている・忌避しているのか」という考察をすることもできるでしょう。


 しかしそんな中で、今回、前回と大学生の男の子が参加してくださいました。SNSでの発信や、奈良での路上傾聴の結果として、このご縁がつながったことはとても嬉しいことです。やってきたことが少しでも果報となったのだと感じます。


 さて、今回のブログでは男性の悩み方について今までの経験と、今回来てくださった男の子から頂いたお手紙とお話の様子を交えながらお話したいと思います。


 彼は今回初めて参加していただき、前半の講話でも鋭い質問や内容に対する理解など、南都の仏教への造詣が深いことを感じました。


 後半の聴き込み寺も参加してくださった時点で、最後まで付き合ってくれるんだなとちょっとうれしくなったり。


 そんな彼の相談事は、「自身の決定に対してモヤモヤとした気持ちが晴れない」ことでした。加えて、「後悔はない」と信頼する方々に宣言してしまったことが重しになっているようでした。


 後悔はないといった手前、いつまでも未練を持っていることへの後ろめたさや、やりきれない感じなど。


 いつどんな時に、誰と、どんな事を感じるのか。考えるのかな。詳しく、具体的に聴き込んでいきました。


 こうしたお話を聞く時に大切なのは、考えていることに囚われすぎないことです。その考えを支持しているものが何なのかを深掘りします。

   

 こういった感情自体は、自身の一貫性を維持したいという自然な心の働きです。一貫しない態度というのは、他人にしても自分にしても何となく収まりが悪く感じてしまうものです。


 加えて、男性はそれを過度に見積もってしまう傾向があるように感じます。


 それは俗に「男らしさ」との言われ、「社会的な望ましさ」や「豪快さ」として現れ、男性を好ましく見る要素になっています(大石ら,2013)。(但し10代はそれ以上に見た目だとか)


 それが他者に自分の内面的な弱さや、悩みを相談し解決へと導いてもらうということは男性にとって消極的な態度を取ることにつながります。もちろん、ホルモンなどの性差の影響もあるでしょう。


 ただ、結果として男性の特に高齢になるに従って心理相談へのモチベーションは低く(J-Net21調査2019年時点)、自殺者も男性が圧倒的に多いのです(男性14,722人、女性7,121人(令和四年警察庁発表))。


 話を戻しますが、彼は自身は言葉によって自身を縛る自縄自縛の状態でありました。その縄の強さには、社会的な立場や交友関係、文化的な要素など要因を分析すればキリがありません。


 このようなことを分析することは、実のところ大した意味はありません。大切なのは、自分自身が感じている気持ちなのです。


 今まで述べたような「男らしさ」や「社会的な望ましさ」によって、自分が本当に感じていること、やりたいことを抑圧してしまっている。


 結局、その気持そのものを否定しなければならなくなる。これはとてもつらい仕事ですし、おおきなエネルギーを使ってしまいます。


 結果として、その思いを押しつぶしたところで本当に得たいものは得られず、ただただ疲弊した心のみが残るのです。


 そうではなく、自分の心を活かす道を模索するほうが良いのです。そのためには安全な場で自分自身との対話によって滞っていたものが解消されます。抑圧ではなく、対話と心からの理解(腹落ち)が大切です。


 私はそのための手助けを行ったに過ぎません。別に、『正しい』方向へと導いたりといったことはあまりしないのです。それが、私のやり方です。


 ここで彼からもらった手紙の一部を紹介させてもらいます。(許諾済み)


『私の思いを聞いていただきありがとうございました。はたから見るとただの思い込みのようなものですが、ここしばらくずっと心に抱えていたことだったので、お話しできて自分なりに解決することができました。

 もうひとりの自分というものは非常に難しいもので、自分である以上嘘をつくこともごまかすこともできない存在かと思います。しかし、「正しい自分」を押し付けてしまうのではなく、そのような自分を見つめ、認めることも時には大切なのかなぁと気づかされました。

 あの日、自分なりに区切りをつけ、その後思いがけないこともありながらも他人の方ではなく、しっかりと前を向いて自分の道を歩む勇気を頂けた。そういう気がします。』


 こういうワークは話を聞いて、そこで何かを解決するというよりは、その後の実際の生活の中で心の働きがスムーズになって様々な変化が起きることがあります。


 あの後、彼にどんな事が起きたのか。私は全くわかりません。これからどうなるのかとても楽しみにしています。


 お手紙ありがとう。またお会いできる日を楽しみにしています。



〈引用〉


J-Net21 市場調査データ 心理カウンセリング  https://j-net21.smrj.go.jp/startup/research/service/cons-counseling.html



大石さおり・北方晴子(2013),現代日本社会における男らしさ測定尺度の作成,文化学園大学紀要 服装学・造形学研究,44


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