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権処さんの日記(六)



令和5年2月22日



 朝は常のごとく。午前は昨日の作業の続き。牛玉札の袋を作ることと、紙衣しぼり。紙衣しぼりとは、修二会で用いる紙製の衣を作るに当たり、仙花紙と呼ばれる厚手の和紙をクシャクシャにすること。紙がまるで布のようになるまで柔らかくします。


 これがなかなか力作業。なおかつ紙が手の脂を吸うため、みんな手をカサカサにしながらの作業になります。


 そうこうしていると昼食の時間。なんとなく食が細くなった気がする。年齢だろうか。大食らいの称号は若者に譲ろう。



 部屋で作業をしていると頭痛。炭に当たったか。少し外の空気を吸って、また紙衣絞り。それが終わって差懸の修理。型紙から直す必要がありそうだ。保管の状態が悪かった。


 こういった作業は上の役の人の分も行う。和上さん、大導師さんに尋ねると今回は不要とのこと。上に行くほど壊れなくなるのだ。私も表の貼り直しに留める。


 七時より読経の稽古。8時から9時までは六時の稽古。9時からは称揚の側の稽古。明日は花ごしらえの後に習礼があり、別火坊に入って初めて処世界さんのお稽古の日だ。


 そこで前日の今夜に和上が稽古をつけてくださった。私は初めて聞く節回し。とにかく長い。そして独特で難解な節が多すぎる。全くできる気がしない。


2月23日


 9時半より花ごしらえ。花ごしらえとは修二会の内陣に飾る造花を作ることを指す。この造花は一般に「糊こぼし」と呼ばれる。




 糊こぼしとは、東大寺の開山堂に咲いている通称良弁椿とも呼ばれる椿の花のことであるが、品種名ではないらしい。まれに、糊こぼしとされる椿が売ってることがあるらしいが、それは本物とは言えないのだとか。

 


 私は初めから花作りに勤しむ。まずは「におい」をまくところから始めるのだ。「におい」とは糊こぼしの黄色い部分を指し、雄しべの部分になる。実はこの作業をするのは練行衆になってから初めてのこと。


 この日、処世界さんは「灯芯」を作るという和上さんとの共同作業がある。それが終わり次第、花作りに参加するので始めの作業はしたことがなかったのである。今年は処世界さんと和上さんが部屋の隅の方で顔を突き合わせて作業している。


 私は狹川長老や橋村管長猊下といった方と一緒の作業で、だいぶ緊張したものだが今年のお二人は息のあったコンビネーションを発揮されていたことでしょう。(見ていないので確証はありませんが…)


 ちなみにこの灯心は、安堵町の灯芯保存会からのご寄進とのこと。こちらでは灯芯つくりの体験も行っていたりと、積極的に活動されております。詳細はこちらから!

 私もいつか訪れてみたいなぁと。


 さて、黄色い雄しべを巻き終われば今度は紅白の花弁を貼り付ける。ここで用いる糊も、別火で造られたものです。仲間さんが拵えたもので、米粉から作った手作り糊。その年によって微妙に出来が異なりますが、今年も良い感じ。


 練行衆、仲間、三役が円座になって一心に12時過ぎまで行う。これがなかなかに足がつらい。しかも周りの目がないためにゆっくりになる気がする。例年だと取材のカメラがあるのだが、そちらのほうが集中して張り切るんだろうか。


 12時半からのお昼終わると、今度は習礼。宝号などはなかなかこれが難しい。細かな節がわからない。終わったのは15時頃になっていた。とても長い。尿意と足の辛さがダブルだ。


  終わる権処も稽古をつけてくださるという。ありがたい。晨朝の稽古をするも、集中力散漫になったのか、鈴を鳴らすタイミングを間違ってしまう。終われば作業の続きを行い。夕食 終わって読経の経本の確認。これは私が今年自分で書いたものだが、節などの記号も見様見真似で書いたことも有り、所々にミスが多い。


 20時からは六時の稽古。今日からは常の稽古になる。半夜と後夜の稽古をつけていただく。お司からは回向文の「コーイ」の音が違うと言われる。中々これを直すのは難しい。どう違うのかは、またいつかの機会にお話してみましょう。別火坊ではこういった細かな部分にまで注意を向けるのです。厳しい!




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