令和二年三月十二日
この日から始まる「達陀」。練行衆は達陀帽と呼ばれるきらびやかな帽子を被り、内陣にて松明を引きずったり、法螺を吹いたり、錫杖をかき鳴らしたりする謎の儀礼である。
〈Youtubeより「達陀」〉
本当にその由来は謎である。ある人は唐代の文化交流の影響だと言うが、一方で古来からの儀礼であるという見方もある。
古来からの儀礼ということは必ずその地の生活に根ざします。火は太陽や生活の火、または焼き畑などを示し、水は農業や生活に欠かせない。つまり、豊穣を祈る儀礼であったという説です。修二会の目的を鑑みると、私にはこちらのほうがしっくりきますね。
さて、この達陀ですがNHKの放送などで見られた方はその迫力や、国宝の伽藍ででかい松明を振り回す様子に驚かれたことでしょう。私も初めてみた時はなんてことするのだと驚きました。法螺の音色に合わせてナニカに扮した練行衆が踊るようにステップする。これが仏教儀礼なのかと。
この達陀を見るために12日から14日までは礼堂や西の局に聴聞の方が多く詰め寄せます。しかし、この日記では正面から見た迫力ある達陀の話はしません。内陣では何が起きているのか。あれだけのものを燃やせば何が起きるのか。その場にいなければわからないことも多いでしょう。
達陀で用いる松明は40キロ以上の重さがあり、とてもではありませんが一人の練行衆がずっと持っている事はできません。ですから配役が決められており、その配役表に従って練行衆は役どころを交代しながら行法を進めていきます。
その交代のタイミング、内陣は混乱の中にいます。松明の煙に加えて帽子のためにと誰が誰だかわからない状態。一体この松明は、洒水器は、錫杖は誰に渡せばよいのか?その混乱ぶりは正面からは見ることはできません。北の局から聴聞されている方はよく見えるかもしれませんね。
達陀には四つの役割があり、練行衆が持ち回りでその役をこなします。その配役は平衆のトップである衆之一が決定し、半夜の悔過が終わった後に取られる「本手水」と呼ばれるお手洗い休憩の際に「処世界部屋」にて発表されます。まずは「松明」役。その名の通り松明を持ちますが、40キロはある巨大な松明は達陀の花形。そのため新入の処世界さんには任せられません。いつか松明役を!
次に「水天」。これは松明の右側で洒水器を持ちながら飛び跳ねている役割です。左手を前に突き出し、時には松明に突っ込むのではないかという勢い。恐れていては腰が引けたような動きになってしまうため勇気のいる役どころです。
次は「錫杖」これは火天、水天の後ろで法螺の音色に合わせて錫杖と鈴を振る役。賑やかし要員などと言われることも。最後に法螺。堂司や法螺の得意な練行衆がつくことが多い役。個人的には辛いと感じる役どころで、唯でさえ吹きにくい大導師の法螺を達陀の間ずっと吹き続ける体力が必要。ちなみに処世界さんは比較的法螺の得意な部類です。
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