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権処さんの日記(十九)




 さて、今回のブログは2023年3月1日のことだ。なんと幸いにもこの日のお松明の中継のがノーカットで掲載されている。もしよろしければこちらを見ながら読み進めていただきたい。


 私の拙い文章では伝わりきらない、様々な情報を味わっていただけることと思います。みなさんも、参籠宿所にいる権処さんになった気持ちでお読みくださいませ。




 18時45分になると二月堂に修二会の紹介の放送が流れる。修二会の歴史について、東大寺の職員さんが毎日放送してくれる。毎回生放送であるが、今のところ噛んだり間違えたりしたところは聞いたことがない。なかなかの腕前。


 これも三年間、毎回聞いてきたのだが、聞く場所が昨年とは異なる。処世界であった頃はたいてい処世界部屋で身体を休めながら「二月堂にはすでに処世界と呼ばれる僧侶が準備のために~」と聞いてから「さて、そろそろ最後の確認をしよう」と動き出したり。


 しかし、今日はそれを参籠宿所、二月堂の下から聞くことになる。処世界さんのいる本堂を仰ぎ見る形でだ。今頃、新入の処世界さんはこれから始まる夜の行法にドキドキしていることだろう。いや、今年の処世界さんはそんなことないかもしれない。


 上堂の前に、松明を伴った動き方について南衆さんからレクチャーを受け、何度か確認を行った。何分ほどんど見たことがないのだ。お松明を見に来られる方も、練行衆の動きなどはほとんど目に写っても認識していないことだろう。私もしていなかった。


 念珠を擦りながら回廊へと出ていき、数段登ったところで待機。とのこと。回廊へと出ていくタイミングは加供奉行の上がるタイミングだと伝えられる。加供奉行は手松明を持って堂内の処世界さんに三度案内を伝える。この松明はチョロ松明とも言われるが、別に小さくはない。映画とかに出てくる松明はこんなもんだろう。あっちが大きすぎるだけ。


 一度目は「時候の案内」。これはおおよそ30分前に行われ、処世界さんは「三寸!」と答える。二回目は上堂の直前に行われる「用事の案内」。これに処世界さんは「おう!」と威勢よく答える。


 最後は「出仕の案内」。これには「承って候!」と答える。必ずそうしなければならないというわけでは無いのだろうが、加供奉行さんが声を枯らさんばかりに叫ぶので、こちらもそれに応じて大声で答えねばならない、ような気がする。これに関して私は特に指示されていないが、声が小さいと諸先輩方から「下から聞こえんかったなぁ」と言われてしまうので必死。


 十九時になると鐘が鳴る。これを聞いて仲間さんが回廊の電気を消す。辺りは暗くなり、観覧客がいよいよかと色めく気配を感じる。


 まずは「用事の案内」。暗がりの中、遠目から見れば小さな、近くで見れば十分な明るさの松明を持って加供奉行が階段を駆け上がる。よっしゃと出仕口から身を乗り出すと、ちゃうちゃう!と待ったがかかる。


 どうにも出ていくのは次の案内であった。そうだそうだそうだった。お恥ずかしい。気が急いているようだ。緊張かな?


 「用事のあんなーーーーーい!」「おう!」


 おお、聞こえた聞こえた。



 一度戻ってきた加供奉行は改めて「上りまっせー!」と声を上げながら階段を駆け上がる。「出仕のあんなーーーーい!!」「承って候!」ゴーンゴーン!ゴーン!


 処世界が鐘をつき始める。それに呼応して奈良太郎も鐘を打ちやる。遠くから低い鐘の音が響く。ゴーン…ゴーン… 

 

 戻ってきた加供奉行のチョロ松明で大松明に火をつける。なかなか初日は火がつきにくい。これは、杉の葉の乾燥が十分でないためだそうな。ゆえに煙る煙る。


 お松明の後に続いてゆっくりと上堂する。火が十分に行き渡るように、松明を何度も回しながらゆっくりと。初めての松明上堂を十分に満喫できる。かえって贅沢な時間かもしれない。


 遠敷の明神さんの前で念珠を摺り、二拍掌、この音が意外と響く。そそくさと礼堂へと入り、鐘の綱を処世界さんから受け取る。お疲れ様です。


 さて、あとは鐘をつきやるだけだ。


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