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執筆者の写真望月 大仙

権処さんの日記(二拾五)


令和5年12月5日


 乾燥による肌荒れが出始めるビタミン C と保湿が必要な時期だ。


 10時半までに水分を十分に取ることで腹具合を を整えることで急な腹痛を避けようと思ったが、この日は数取り懺悔。


 礼堂にて念珠を擦りながら激しく上半身を下へ上へ屈伸する作法だ。これが腹に効く。案の定日中の掃除を抜けて手水へ。こればかりは改善しない。修二会における最大の難所と言えよう(私にとって)。


 日没後の掃除では権処世界は香水杓を水洗い。ずっと内陣にあるためホコリなどを落とさねばならない。


 ふと明るいところでみると金の部分と黒い部分が混在する。真鍮であれば磨くのだがいかに?と堂童子さんと調べるとどうも金に塗ってあるようだ。これは磨いたらあかん…と綺麗にするのは諦める。


 さて、初夜の前のことだ。この日は差時というらしくどうにも上堂前の動きが違う。しかし、いまだにこれはよくわからない。大宿所で何がしかをしているらしい。


 中灯さんになれば書けることもあるだろうが、権処さんはただ壁ドンがあるということしか分からぬ。


 どうにも壁を叩いて準備ができた合図をするというのだ。不思議な作法があるものだと耳を済ませていると、ドンドンと音が聞こえた。


 それを合図にお祓いをし、権処はすぐに出るのだ。このような動きをしていることも参籠宿所にいないとわからない。処世界さんはしらないのだ。


 お堂に上がれば今日は実忠忌。普段の悔過法要の途中に論議法要が挟まれるため、全体として長くなる一日だ。


 長いから辛い、という人もいるが私はあまりそうは感じない。内陣にいる時間が苦でないのだ。


 さてはて、この日は初めての「走り」になる。ここで新入の処世界さんの出番。大舞台である長最上だ!


 「南無最上」という文言を、節をつけてただ一人で朗々と唱えあげる処世界の見せ場。といっても今年は聴聞の方はおらず、少々さみしい舞台やもしれぬ。


 しかし、誰も聞いていないということはないのだ。処世界さんが内陣の南西で立ち止まり、念珠を掲げたその時。私を含め、すべての練行衆が耳を澄ませ、その勇姿を見守っていたのだ。その眼差しは暖かい。


 私が初めて処世界で長最上を行った時、緊張して堂童子さんの顔しか見えていなかったが、もしかすると他の練行衆方が見守ってくれていたのやもしれない。


 私の新入の時にはまだ聴聞の方もいらしていた。それもすでに三年前、懐かしい記憶になっている。


 来年の修二会はどうなるのだろうか。練行衆の発表の日も近い。そのうちに何かしらのお知らせがあるとよいのだが…さて。


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