令和二年二月二十七日 (午後の時間の過ごし方)
食事が終わると総別火での仕事が始まります。まずは「時数表」。これは、修二会の行法を行うに当たって誰がいつどの役目を行うのかという当番表に当たります。これを作成するのは平衆のトップである「衆之一」さんです。
これは、四職はそれぞれが決まった仕事があるので当番制の仕事はすべて平衆で回すためです。六時の「時導師」「五体投地」、初夜の「読経」「神名帳」「過去帳」「懺法」「走り」などいつ誰が担当するか全て決めます。
特に六時の「時導師」「五体投地」は、様々な決まり事があり、一筋縄には決めることが出来ず、毎年衆之一さんが頭を悩ませているとか。(「この日は処世界、権処世界は当てられない」「連続して入れてはならない」など)
衆之一さんから時数表を配られたら、自分用の時数表を傘紙に写す必要があります。処世界と権処世界は二月堂内陣に掲示するための時数表をそれぞれ用意せねばなりません。これがまた大変で、書き損じが出来ませんから一コマずつ原本と見比べながらの作業。
一つ間違えたら書き直しをするか、その部分を切り抜いて修正作業をせにゃあなりません。丁寧な仕事が要求されます。書道を習っていてよかったと思える瞬間ですね。この時数表の記名は役職名では無く、法名で記されますから人によって書きやすい名前と書きにくい名前があるんですね。私の名前はめっちゃ書きやすいと評判です笑。
そんなことを考えながら書いていると一行目から間違える。うがー!
中灯さんから予備の紙をもらって一から書き直し・・・。この枠線を作る作業が地味に大変で。
そんな作業も夕食前で終わり。加供奉行の「お掃除」という掛け声で大広間の清掃が行われる。このときにはゴザのゴミがまぁ出るわ出るわ。特に処世界さんのゴザは総別火入りが早いぶん長く使っているのでちょっと動かすと崩壊しそうなほどボロボロ。
この際に「断ちもの板」と呼ばれる大きいまな板が回収され、以降の作業は禁止される。メモ書き程度は可能だが、先述の時数表などの作業は出来ない。例外は中灯さんで、それは修中日記や本行中に用いる様々な名簿の作成を一手に引き受けているため。一番忙しい仕事だ。
それが終わると貝のふき合わせ。修二会では本行中は何度か法螺貝を吹く作法が存在する。しかし、修験のように甲乙といった音色が有るわけでもない。ただ、片手に収まる程度の小さな法螺貝。これは各自用意するものだが私は兄弟子からお借りしたもの。口は付いておらず吹くのには少々難儀する。それでもなんとか音が出たので一安心。プピー
〈参考〉
https://www.nara-np.co.jp/news/20130227091259.html
夕食後は声明のお稽古。新入はまた別途新入のための稽古時間が設けられるため不参加。その間に、本行中の食堂で行われる授戒作法についての伝授を和上さんから。食堂では作法中に鐘を叩く。
普段なら自分でチーンとやるわけだが、この時はなんと処世界が鐘を叩く。どういう訳か食堂の鐘は処世界の席にぶら下がっており、授戒作法中は適時この鐘を叩かにゃならん。初めて見る作法で、和上さんに合わせねばならない。責任重大である。
とはいえ、二月堂の食堂の中がどうなっているのかさえわからないし、鐘がどうぶら下がっているのかもわからない。(仲間の時に見ているはずだがそんなところまで気をつけて見てない)
今年放送されたNHKのドキュメンタリーの中では和上による授戒作法や食堂作法が映されていた。これを見ておけば本当によい予習になったんだけどなぁ。来年以降の新入さんは事前の心構えが出来てラッキーなのか、この何が何だか分からない空間に飛び込んでいくドキドキがなくて残念なのか。私は後者な気がする。
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