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執筆者の写真望月 大仙

処世界さんの日記(四拾九)

令和二年三月十二日



※達陀のお話はYou Tubeの動画をご覧になりながらお読みください(画像はYou Tubeより)


 初めての達陀。処世界さんの配役は「錫杖」。法螺の音に合わせて両手に持った鈴と錫杖を振るお役目。賑やかし役である。正面で跳ねる火天と水天の様子をジッと見る。どのような動きをすればよいのかを観察するのだ。それが終わると今度は「法螺」だ。


 修二会では法螺が随所で用いられる。別火坊では「貝の吹き合わせ」などがあり、修二会の名物の一つとして新聞などでも取り上げられる。なぜ「吹き合わせ」というのかといえば、別火坊が一つでなかったからだとか。


〈参考 奈良新聞〉


 本行中では「初夜」の悔過が終わり、神名帳が始まる直前まで平衆が貝を吹く作法が存在する。この中では衆之一と南衆が「尾切」「小鷹」と呼ばれる法螺貝を吹くことは有名だ。これは足利義満がその音を楽しんだという逸話で有名ですね。(法螺貝のWikipediaに載っているほど有名)この内、小鷹の方が甲高い音を出すのですが、それ故に吹くのが難しいとか。


 ちなみにこの時の処世界さん(と権処世界)は大法螺を担当しており、「ぶお~」という野太い音を出しております。これも二月堂の寺物です。他にも「大導師」「咒師」がそれぞれ専用の法螺を持っております。


 達陀で使用するのはこの内で大導師の法螺。大法螺や尾切、小鷹と異なりしっかりと吹口が付いているので比較的に吹きやすいものの、その口が広く一般的な法螺貝に比べると吹きにくい。これを「プーップッ」「プーップッ」と吹く。これに合わせて松明と水天が動くわけです。何回動くのかという数も数えておく責任のあるお役目。


 問題はこの後。正面で火天と水天の演舞が終わると長法螺。「ぶーーーーーーーーーー」二人が正面に帰ってくるまで「ぶーーーーーーーーーー」。これがきつい。正面に戻れば再び「プーップッ」「プーップッ」と吹く。休む暇がないのだ。数回こなして残りは堂司に法螺を託します。個人的には松明役より大変なんじゃないかと思っています。


 さて、後半戦。松明も大分燃えて小さくなってきた頃処世界さんにも花形が回ってきました。「水天」役です。しかし、この日の松明は火の着きがあまりよろしくない。火よりも煙、煙、煙。水天役で松明に身体を突っ込ませると…目がっ目がぁ!と涙が出るほど目に染みる。この回が終ってすぐに「ハッタ」の掛け声。



 咒師がこの掛け声をすると「ハッタ」役に松明が渡されます。正面にて松明を立て、勢いをつけて思いっきり礼堂にまだ火が残っている松明を放り投げる!達陀の中でも最もド派手な瞬間です。近年ではあまり飛びませんが、昔は格子まで飛んでいったこともあったとか。そこまで飛ばなくても座っている方の膝に乗っかったこともあったとか。正面で聴聞される方は要注意です!え?それが楽しみ?それならどうぞどうぞ。


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