【神名帳探訪記①】
〈三重県桑名市 多度大社 no.62〉
「お伊勢参らばお多度もかけよ、お多度かけねば片参り」と言われ、伊勢参りの道中に位置したとされる大社
古代より多度山を御神体としており、当地の豪族の祖神として信仰されていた
本宮と別宮が向かい合うように建てられており多度両宮と称される
天平の世には万巻という僧侶が神宮寺を建立。この万巻は全国各地で神宮寺を建立しており、かの鹿島神宮寺を建立し、さらに道中に立ち寄った熱海で修験道に通じ、箱根山では箱根権現を感得し箱根神社を建立し九頭竜を調伏したという。
なんと相模国にも御縁があったとは。ちなみに万巻のお墓は箱根神社にあるとか。次に箱根神社に参拝する折には伺いたい。
さて、湾岸桑名ICを降りて一般道を北上していくと、道中に鳥居が。車道にかかる鳥居といえば大神神社が思い浮かぶが、こちらは少し上がったところにあるので遠目にもよく目立つ。
専用の駐車場は広く、休日は料金を取るようだがド平日のこの日は無料。
車を停めて早速参拝に向かうと美しい紅葉が目を楽しませてくれた。
このあたりはまだ紅葉の盛り。
さて、多度大社は馬上げの神事で知られ、参道の左横には専用の道と観覧用の席が用意されているようだ。
いつか見てみたいがものすごい人なのだろう。
参道の階段を登り鳥居をくぐると開けた境内。
てっきりすぐに本殿があるのかと思ったが、あるのは神楽殿と大きく立派な社務所。
境内図を見ると本殿までは少し歩くようだ。
参道の横には川が流れており、少し薄暗く幽玄さを感じさせる。
山門には「多度両宮」。これは先述の通り。
お社へ向かうには橋を渡らねばならぬが、これが彼岸と此岸を隔てるよう。向こう岸は神の居所。
本宮の先には滝が流れており、かつては禊や滝行もあったのだろうか?と思いを馳せる。
山と水と神とは切り離せないものがある。生かされているという実感が伴うからだろう。
修二会もお水取りの神事を行う故により感じ入る。
橋を渡り深く息を吸うと、冷たく透き通った空気が胸を満たす。
良い場だなと素直に感じ入る。
本宮、別宮にて心経を唱え、参拝させていただいたことに感謝を。
もう一度橋を渡り、此岸へと戻る。振り返り変わらず佇む社を眺める。いつまでもそこにいたいという感覚になれる神社はそう多くない。
神楽殿のある広場に戻る。実はもう一カ所参拝したいところを境内図に見たのだ。
社務所を通り過ぎて坂を下るとそこには多度の観音堂が。
前述の通り、ここにはかつて神宮寺があった。しかし、度重なる戦火や洪水によって度々堂宇は失われてしまった。
今あるのはこちらの観音堂のみ。創建は明治期で、場所も違ったという。
階段を登り、堂内に入ると先客が。話を聞くとどうやら地元の方のよう。
すぐ近くに住んでいるが、数年前にこのお堂を知り、安置されている観音さまの素晴らしさに心打たれ通われているということ。
実際にこちらにおわす十一面観音さまと千手観音さまは流麗な御姿で、その金色の肌からは修復が何度かされていることが見て取れる。
あぁ、信仰されてきた仏様だと。
こちらでも般若心経と御真言を唱ふ。
終わってお稲荷さんも参拝し、帰ろうと思ったが不意にみやげ物屋が目に入る。
こういう店構えはつい立ち止まってしまう。そうするとすぐに奥からおかみさんが。ちょいちょいと試食を頂戴する。これがなかなかにおいしい。
多度名物というのでせっかくだからおひとつ…。
こうして、多度の大社を満喫し次の社へ車を走らせる。
(②へ続く…)
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